FC2ブログ

伊藤幸久の妄想特急

彫刻家、伊藤幸久の日々と妄想の物語。

第2章 Charisma ーカリスマー

カリスマ

 中学の頃、桜子は佑子の前でだけは少し高慢な態度を取っていた。初めは無意識に、しかしそのうちに自分でもその態度に気づき、理解した。桜子は佑子が自分の事をどういうふうに見ているのかを感じていた。それゆえ桜子は自分の性格に、あえて高慢な要素を付け加えた。佑子の期待を裏切らないように、そして、自分がカリスマでも何でもないことを知られないように。桜子にとっても佑子は大切な存在であった。その感情は、佑子の桜子に対して持つ、その種の感情よりも大きかったのかもしれない。

 桜子はまた、ひどくお姉ちゃん子でもあった。ゴスロリの格好をしだしたのも、姉がやっているのを真似したかったからだ。姉がやっている事に間違いは無いと思っていた。だから姉が中学の時に入っていたテニス部にも入部した。姉の真似をすれば周りの皆から一目置かれる。桜子にとって姉は人生の見本だった。それゆえに小5の2学期に突然ゴスロリの格好で登校した時も、何食わぬ様子で堂々と出来たのだ。それに、姉に出来て自分に出来ない事は何一つないという根拠のない自信も持っていた。

 周囲からクールな性格と思われていたが、それは、リアクションが薄いのと、困った時に黙る性質からである。その性質は佑子にも見受けられた。それが、桜子が佑子を気をかけるきっかけともなった。

 初めて桜子がロリータファッションで小学校に登校した時、ざわつくクラスメート達の中で、佑子だけは遠くから表情も変えずにじっと桜子を見続けていた。その時に何となく、自分に似た匂いがする子だと思った。それから桜子も佑子に注目しだした。クールな二人の性質は、桜子に神秘性を、佑子には静寂を与えた。それとは別に、桜子は佑子の中に姉と同じ雰囲気も感じていた。それは彼女に4つ下の妹が居たからかもしれない。

 中学で佑子と仲良くなり、彼女の羨望の眼差しを感じだした。そのうちに、自分が姉の真似ばかりで薄っぺらな人間なのではないかと感じるようになった。ある意味で、桜子は、佑子の前でだけは等身大の自分を確認することが出来た。それでも、少し高慢な態度はとり続けた。佑子にがっかりされたくなかったから。


佑子と桜子


第3章につづく…。


ーここまでのあとがきー
 ご覧いただきありがとうございました。
第1章 La fatigue は2009年に開催した個展の内容を文章化したもの、
第2章 Charisma は個展と同時開催していた金沢現代彫刻展に展示した関連作品「カリスマ」を文章化したものです。

 第3章、そして最終章は
7月末か8月頭に予定している
展覧会にて公開予定!
詳細は後日、乞うご期待!


テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

彫刻ノベル | コメント:2 | トラックバック:0 |
<<前のページ| ホーム |次のページ>>