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伊藤幸久の妄想特急

彫刻家、伊藤幸久の日々と妄想の物語。

「18:00」

にちようの18:00

遊び疲れたふたりにすい魔がおそう。


「18:00」
「18:00」(H40x240x240cm/陶、水彩絵具、電球、木材/2008年)


付けっぱなしのテレビ

少女はすでに夢の中。


たのしみにしていた

ちびまる子

少年は眠気にあらがう。


少年の耳にテレビの音が入り

目にはぼんやり少女が映る。


18:00が待ち遠しかった少年

16:00の西日がきらいな少年

夕飯は19:30。




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祝「Kapo2周年展」やってます!

ご無沙汰しています。伊藤です。

昨今の多忙も落ち着き、やっとこ今年最初のブログです。


さて、実は僕、

石川県金沢市にあるアートセンターKapoでスタッフをしています。

立ち上げの時より関わってきたKapoも

2011年2月14日をもって2周年を迎えました!


それを記念してこれまでKapoに関わり、支えていただいた多くのアーティストの作品を集め、
『Kapo2周年展』を開催しています!

110215Kapo2周年展イメージ画像(WEB用)2

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『黙って耐える子供を見た。』

101018-忍耐左斜め
「忍耐」(H75×W25×D30/陶,水彩着色,電球,木の椅子/2008)


この作品には実在のモデルがいる。


私が彼と出会ったのは2008年2月のこと。

某国立大学の大学院入試の帰り、
共に試験を受けた大学の友人Tが観たい展覧会があるというので、

T と私、そしてもう一人の大学の友人 I と3人共だって、
その展覧会が催されているギャラリーへと向かった。

私たちは上野駅から地下鉄に乗り清澄白河駅で下車し、
ギャラリー方面の出口階段へと向かった。

出口階段に差しかかる手前にはトイレがあった。
そのトイレの前には大人のひざの高さほどの縁石があり、
そこに彼が座っていた。

年の頃は3歳ほど、フード付きのコートを身にまといフードを頭にすっぽりとかぶっていた。
フードにはクマの耳と目と鼻が付いていて、彼は熊の威を借りそこに佇んでいるようだった。

彼の横を昼下がりのマダム3人組が通りかかった。
彼女達は声を合わせ、「あら!かわいいわね~!」
と彼に対して大きなリアクションをとりながら通り過ぎる。

彼女らの行動に彼はピクリとも反応しない。
身を屈め、両の拳をギュッとにぎり、空にあるただ一点を焦点も合わさずに見ていた。
彼は意識を自身の中へと集中し、ただひたすらにその状況が過ぎるのを耐えているようだった。

彼はあの時、あの場所で、社会の中にただ一人取り残された状況にあった。
あの時、彼の周りは未知への恐怖で満ち溢れていたことだろう。
しかし、彼にはそれらの恐怖を払拭する術はない。

それでも彼は、泣きもせず、喚きもせず、

ただひたすらに耐え続けていた。

101018忍耐

その後、トイレの中から彼の父親らしき人物が出てきた。
彼はその人物に駆け寄り黙って手を繋いだ‥。

私が彼を目撃したのは、ものの30秒。
その間に一つのドラマを見たようだった。

小さな子供でもああやって不安と戦っている。
自分ももっと辛抱してがんばらないといけない。
そんな思いを残してくれた彼との出会いであった。

その気持ちを忘れないように
本作「忍耐」を制作するに至った訳である。


余談ではあるが、

その後、私たちは
出口階段手前の掲示板に目的の展覧会のポスターを見つけ、
会期が1週間後であることを確認し、
駅から外に出ることも無く、清澄白河駅を後にした。

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第1章 La fatigue -疲労-

2009個展展示風景1

 「桜子ちゃん…。また同じクラスだね。」

 中学の入学式の翌日、佑子は教室で桜子に声をかけた。

 二人は小学5、6年生の頃から同じクラスだったが佑子が桜子に声をかけたのは殆ど初めての事だった。いや、自分から人に声をかけた事自体初めての事かもしれない、そう感じるほど佑子から人に声をかけることは珍しい行動であった。佑子に話しかけられた桜子は初め、きょとんとしていた。しかし、ほどなく応えてくれた。

「また同じクラスだね。よろしくね。」

佑子の不自然な様子には気づいていないようだった。あるいは気づかないふりをしてくれたのかもしれない。


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第2章 Charisma ーカリスマー

カリスマ

 中学の頃、桜子は佑子の前でだけは少し高慢な態度を取っていた。初めは無意識に、しかしそのうちに自分でもその態度に気づき、理解した。桜子は佑子が自分の事をどういうふうに見ているのかを感じていた。それゆえ桜子は自分の性格に、あえて高慢な要素を付け加えた。佑子の期待を裏切らないように、そして、自分がカリスマでも何でもないことを知られないように。桜子にとっても佑子は大切な存在であった。その感情は、佑子の桜子に対して持つ、その種の感情よりも大きかったのかもしれない。

 桜子はまた、ひどくお姉ちゃん子でもあった。ゴスロリの格好をしだしたのも、姉がやっているのを真似したかったからだ。姉がやっている事に間違いは無いと思っていた。だから姉が中学の時に入っていたテニス部にも入部した。姉の真似をすれば周りの皆から一目置かれる。桜子にとって姉は人生の見本だった。それゆえに小5の2学期に突然ゴスロリの格好で登校した時も、何食わぬ様子で堂々と出来たのだ。それに、姉に出来て自分に出来ない事は何一つないという根拠のない自信も持っていた。

 周囲からクールな性格と思われていたが、それは、リアクションが薄いのと、困った時に黙る性質からである。その性質は佑子にも見受けられた。それが、桜子が佑子を気をかけるきっかけともなった。

 初めて桜子がロリータファッションで小学校に登校した時、ざわつくクラスメート達の中で、佑子だけは遠くから表情も変えずにじっと桜子を見続けていた。その時に何となく、自分に似た匂いがする子だと思った。それから桜子も佑子に注目しだした。クールな二人の性質は、桜子に神秘性を、佑子には静寂を与えた。それとは別に、桜子は佑子の中に姉と同じ雰囲気も感じていた。それは彼女に4つ下の妹が居たからかもしれない。

 中学で佑子と仲良くなり、彼女の羨望の眼差しを感じだした。そのうちに、自分が姉の真似ばかりで薄っぺらな人間なのではないかと感じるようになった。ある意味で、桜子は、佑子の前でだけは等身大の自分を確認することが出来た。それでも、少し高慢な態度はとり続けた。佑子にがっかりされたくなかったから。


佑子と桜子


第3章につづく…。


ーここまでのあとがきー
 ご覧いただきありがとうございました。
第1章 La fatigue は2009年に開催した個展の内容を文章化したもの、
第2章 Charisma は個展と同時開催していた金沢現代彫刻展に展示した関連作品「カリスマ」を文章化したものです。

 第3章、そして最終章は
7月末か8月頭に予定している
展覧会にて公開予定!
詳細は後日、乞うご期待!


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